「思考を目に見えるものにする」画風から、別名イメージの魔術師。

目に見えるはずのものが見えなくて、見えないはずのものが見える。

そんな不思議な世界を創り出すのが、ルネ・マグリットです。

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国立新美術館で開催中の「マグリット展」に行ってきました。

マグリットはシュルレアリスムを代表するベルギーの画家で、
パイプの絵に「これはパイプではない」という文字を描いたあの人です。

本展覧会のナビゲーターは石丸幹二さん。言うまでもなく良いです。声だけでいちいちシビれます。笑

 
 

▼お気に入り作品紹介
humaine
《人間の条件》

窓枠の手前にキャンバスが置かれていて、キャンバスの向こう側の絵がそっくり描かれています。この絵に対してマグリットはこう述べています。
部屋の内側から見た窓の前に、私は、その絵によって隠されている風景の部分と正確に同じものを再現した一枚の絵画を配した。かくして、絵の中の木は、背後に部屋の外の木を隠すことになった。絵を見る者にとって、それは、絵の中の部屋の内側であると同時に、外側の現実の風景でもある。二つの異なった空間に同時的に存在することは既視体験(デジャ・ヴュ)を感じる場合と同じく、過去と現在を同時に生きるようなものである
はぁ・・・。まあ、なんとなくわかりますよね(汗)

絵の横には「外部にある世界を見ていると思いながら、見ているのは私たちの内部にある表象なのである」と解説がありました。内と外を隔てるもの、それは人間でいうところの「目」です。だからこのキャンバスは私たちの目なんです。

そして、この空間を認識ができることがタイトルにある「人間の条件」であると・・・。

付いてきてますか?では、もうちょい難しい話にいきます。
傑作
《傑作あるいは地平線の神秘》

「人間の条件」からもわかるように、マグリットの特徴の一つは「タイトルが斬新」ということです。タイトルには一応全部意味があるっぽいのですが、あまりにも飛躍しすぎていてタイトルから絵が全く連想できません。

たとえばこの作品がなぜ「傑作」というのかの解説文をまとめてみると
ひとりの男が月について考えるとき彼は月についての考えもち、月は彼のものになる。つまり唯一の月は分割できる。世界は単一でありながら分割できるのだ。単一性の分割という哲学的な問いを投げかけた、このパラドックスは傑作である。故にタイトルは「傑作」
・・・この人頭いっちゃって(ry

マグリットは広告マンでもあったので、デザイナーだけでなくコピーライターにも向いていたのかもね←


ちょっとブレイクしましょう。
アリス
《不思議の国のアリス》

印象派、ルノワールの影響を強く受けている作品です。ルノワールは幸福の画家とも呼ばれているだけあって、幸せな雰囲気が伝わってくる絵です。

ただし完成は1946年。戦争で暗い世の中だからこそ、ファンタジーの世界に救いを求めたのかもしれません。

ブレイクついでに、素朴な疑問を抱いた作品があったので少し触れます。
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《自然の驚異》

マグリットは50歳を過ぎた頃から、石のモティーフを好んで描いていました。そんな「石の時代」と呼ばれる時期の一枚。セイレーンがモティーフだそうです。

ん?セイレーンって上下逆じゃね?

そう思ってググりました。
ギリシア神話に登場する海の怪物。上半身が人間の女性で、下半身が鳥の姿をしている。(Wikipediaより)

ですよね。だって僕が知ってるセイレーンはこれですから↓
 
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さて次は1960年代のマグリットです。僕は後期のマグリットが好きです。というのも、不安感やエロティシズムが薄れる一方、絵の完成度が上がっているからです。
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《空の鳥》

鳥の形で空を切り抜いたモティーフは数多ありますが、中でも「大家族」が有名。ですが僕のお気に入りは「空の鳥」。注目は右下。滑走路が描かれています。この絵は1960年代にサベナ・ベルギー航空のシンボルマークになっているのです。

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《白紙委任状》

隠されているものを見たいという人間の欲求を引き出すような作品です。この絵では何が見えていて何が見えていないのか、絵画とにらめっこ。「目に見えるものは、他の目に見えるものを隠せる」という既出の作品「人間の条件」に似たメッセージが込められています。




▼期間限定展示について

最後に5/13から展示予定だという作品に触れておきます。実は僕が一番好きな作品なのですが、それがこちら。
現実の感覚
《現実の感覚》

マグリットの使うモティーフの一つに「宙に浮かぶ岩」があります。今回展示されるのは「現実の感覚」ですが、同じモティーフで有名なのが「ピレネーの城」という作品。そしてこの作品にインスパイアされた日本人アーティストがたくさんいます。たとえばMr.Children。
 
FotorCreated
左:「現実の感覚」マグリット
中:「ピレネーの城」マグリット
右:「優しい歌」Mr.Children

ミスチルの「優しい歌」のジャケットが、そのまんまマグリットの「ピレネーの城」なのです。
他にもさだまさしさんは「マグリットの石」という曲を歌っています。

マグリットの石は俺達の
時代を見すかして笑ってる
お前はデ・ラ・ラ・マンチャの様に
風車に戦いを挑んでた

(さだまさし「マグリットの石」より)

ね?いっきに身近になったでしょ?

そんな「ピレネーの城」は今回展示されていませんが、個人的には「現実の感覚」の方がお気に入りなのでやっぱり見たい。これタイトルが良いんです。非現実の風景に「現実」というタイトルをぶつけてくる。すると頭の中でぐるぐるが始まるわけです。このぐるぐるがモノづくりに大切なのです。あー、もうポストカードとかじゃなくて、実物大でこの絵がほしい。笑

ということで、もう一回いきます!